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2014-02-25

2D被り物屋さん(2013年10月『おひさまアートバザール8』)

毎年、岡山市の石山公園で開催している「おひさまアートバザール」は2014年で9回目を迎えている。2006年よりMAEMU企画のスタッフとして関わっており、2007年の「おひバザ2」から、毎年スタッフとして、出店者情報などを盛り込んだ様々な情報をおひバザ当日の模様と合わせてミニFM「ニシユキFM」にのせて公園内で放送している。

8回目となった2013年は、新たな試みとしてミニFMを放送しながら自分の作品もブース内に展示することにした。それが、「2D被り物屋さん」である。

アミダラスケッチ「2D被り物屋さん」は、数年前、ある宴会(注1)のために「STAR WARS」に登場するアミダラ女王の被り物がきっかけで制作したアミダラ女王の被り物はずっとあたためていたネタだったこともあり、この内容でなら「おひバザ8」でも展開できるかもしれないと、制作にとりかかることにした。イメージとしては、お土産屋さんのように店内に沢の顔だし看板が縦横無尽に吊下げられ、来場者は好きな「顔だし看板」を選んでおひバザの会場内を自由に練り歩くことができる、というものである。 レンタル被り物屋さんである。

私にとって「顔だし看板」のきっかけはアミダラだったので、当初は名作映画からヒントを得た方がいいだろうかと素材を検討していた。映画、物語、日本神話などが候補として浮かぶようになった。天照大神等の神様達を描くのも楽しいかもしれないと考え始めていた時、ふと仏像もいいかもしれないと閃いた。

確か10年か15年くらい前だったか、京都へ一人旅行をした際に、何気なく立ち寄った東寺にて衝撃的な出会いをしたことを思い出した。東寺の金堂・講堂に鎮座する仏像にいたく感動し、それからは何気なく仏像本を手にしてはため息をついていた。学生時代に受講した仏教美術の講義をもっと真剣に学んでおけばよかったと後悔しながらも、京都へ訪れる度に東寺にも足を運ぶようになっていた。

数年に1度の出会いだが、2011年には東京国立博物館にて開催された「空海と密教美術展」では、お気に入りの帝釈天様を360度、どんな角度からでも拝みたおすことができた。これらは、完全なるミーハーな一仏像ファンのなにものでもないが、いっそのこと、この想いを作品にしてはどうだろうか!?!と思い立ち制作に取り掛かった次第である。

作業行程は、資料を元にいくつかの仏像を選んで簡単なスケッチを描いていく。おおまかなスケッチと資料を元に、アクリル絵の具で段ボール紙へ直に描いていった。地元の寺社仏閣もあるだろうし、奈良・京都の有名な寺社仏閣に鎮座する仏像など様々な種類の仏像がある中、やはり、自分の中にある基本を忘れてはいかんだろうということで東寺の仏像を描くことにした。

仏像光背制作を続けていくうちに、気がついたことがあった。薬師如来像を描いていると、光背に君臨する大量の仏様達が、苦行のように私に襲い掛かってくるのである。延々と繰り返し登場し、描いても描いて終わらない。何体いらっしゃるのか分からない仏様の数に、ちょっと筆を置いて逃げ出したくなるときもあった。  

これは、恐れ多くも修行の一環でもある曼荼羅や仏像彫刻、仏像絵画にも通じるものがあるんじゃなかろうかと、段ボール紙に墨汁を浸した筆1本を手にしながら、「私も“人生”という名の修行をさせていただいているのだなあ」とささやかな発見もあった。制作期間が短かったため、思うような数の顔だし看板の仏像を生み出すことができなかったが、合計5体の大好きな東寺の仏像看板を生み出すことができた。

顔出し看板風景当日はあいにくの雨だったため、仏様達をなかなか公園内で御披露目することできなかったことが残念でならない。本来ならば、じっと佇んで見守ってくれる仏様が、この2D被り物を身につけることで自ら仏様となり、縦横無尽に出歩くことができるのである。

当日、数少ない体験者の一人から、仏像看板を被り石山公園内を練り歩いていると、見知らぬ人から手に50円を持たせてくれたという逸話を聞かせてくれた。仏様は私たちにこんなことまで気がつかせてくれるのか!といたく心が震えたのを覚えている。

 

アミダラ女王(注1)2005年にMAEMU企画の前身団体「いづし文化横町」時代におこなわれた宴会で披露した。アミダラ女王被り物は、技術上、立体的な被り物を作ることができなかったため、段ボール紙を使用して移動が可能な顔出し看板風に仕上げた。

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